敷引とは
敷引特約とは、貸主が借主に対し、賃貸借契約が終了し、建物を明け渡す際に、
敷金のうち一定の割合を控除し、その残額を返還することをあらかじめ合意しておくことを言います。
敷引金の性質
敷引金の性質には、下記1〜5の要素があると説明されますが、当事者の間に明確な意思が存在しない場合は、
これらの要素が渾然一体になったものと考えられます。
- 賃貸借契約成立の謝礼
- 賃貸目的物の自然損耗の修繕費
- 賃貸借契約更新時の更新料の免除の対価
- 賃貸借契約終了時の空室賃料
- 賃料を低額にすることの代償
敷引特約の有効性
敷引特約が、下記1、2の要件を満たす場合、消費者契約法10条により無効となります。
- 民法などよりも消費者の義務を重くする条項であること(義務加重)
- 信義則(民法1条2項)に反して消費者の利益を一方的に害するものであること(信義則違反)
裁判所の判断(神戸地裁平成17年4月14日)
保証金30万円のうち25万円を敷引金とする敷引特約が、消費者契約法10条に違反するかどうか争われた事案で、
民法上、借主には、賃料支払以外の義務は予定されていないため、
敷引特約が、借主に、賃料以外の負担を負わせるものであれば、
民法などよりも消費者の義務を重くする条項(義務加重、要件1)であると認められるとしています。
また、敷引金の性質については、次のように分析しています。
- 「賃貸借契約成立の謝礼」という要素については、借主だけに、謝礼の支払いを強いるのは、一方的な負担を負わせるもの。
- 「賃貸目的物の自然損耗の修繕費」という要素については、賃貸借契約では、借主は自然損耗の修繕費用を負わないのが原則。敷引金負担を強いるのは、二重の負担を強いることになる。
- 「賃貸借契約更新時の更新料の免除の対価」という要素については、借主だけが更新料支払義務を負わされる正当な理由はなく、更新されるか否かにかかわらず、更新料の免除の対価として敷引金を負担させるのは不合理。
- 「賃貸借契約終了時の空室賃料」という要素については、借主が目的物を使用収益しない期間の空室の賃料を支払うべき理由はない。
- 「賃料を低額にすることの代償」という要素については、賃貸借期間にかかわらず、敷引金として一定額を負担することに合理性があるとは思えない。
以上により、貸主が、借主に、賃料以外の金銭的負担を強いる正当な理由を見出すことはできず、
本件の敷引特約は信義則(民法1条2項)に反して消費者の利益を一方的に害するもの(要件2)と認められるとしています。
したがって、金額が過大で、明確にその趣旨と内容を賃借人に説明したことが証明できない敷引特約については、
消費者契約法10条に基き無効であるとして、敷引金の返還を請求できると考えられます。
内部リンク
- 退去時の原状回復義務
- 敷金の返還を請求する場合(内容証明の利用法)